俺のココ、あいてるけど。
 
─・・

──・・・

───・・・・


そのあと、どうやってそこから立ち去ったのか覚えていない。

我に返ったときには部屋の前で、瞬き一つしないで心配そうに顔を覗き込むモッサ君がそこにいた。


「・・・・」

「・・・・」


モッサ君もあたしも、一言も言葉を発しなかった。

しばらく見つめあったまま、何も言わず、何も言えず、ただ時間だけが過ぎる。


ウィンカーがカチカチと規則正しい音を立てていて、車内のクーラーからは冷たい風が吹いていた。

そしてそれが時たまあたしの前髪を押し上げ、エンジンの振動がわずかに体を揺らす。


「大丈夫か?」


そんな中で先に口を開いたのはモッサ君だった。

そして、続けてこう言う。


「さっき泣いてたから」

「え? あ、そ・・・・そうだったんだ。ごめんね。変なとこ見せちゃって」


そう明るく振る舞いながらほっぺに手を当てると、乾いた涙の筋が指先に感じられた。

・・・・泣いたんだ、あたし。

そこでようやく、あのときの光景がよみがえった。
 

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