俺のココ、あいてるけど。
 
「もう30分も過ぎちゃう。タイムカードだけでも押さなきゃ」


お菓子の山は一向になくなってはくれなかった。

すると、案の定、登坂さんが様子を見に来る。

声をかけられると、とっさにビクッと反応してしまう。・・・・怖い。


先入観で人を判断してはいけないことくらい分かっているけど、どうしても・・・・。

朝のお酒の匂いも重なって、もうあたしの中の彼は“怖い人”になってしまった。


「あの、さっきパートさんにここを頼まれたんです。だから、途中でやめるより最後までやったほうがいいと思って・・・・」


それでもなんとか状況説明と自分の意見を伝えてはみたけど、登坂さんの返事はノー。

だいぶ言葉を濁してはいたけど、要するに“さっさと帰れ”ということだった。

たぶん“あたしがいる間は自分の仕事も増えるから”・・・・そんな意味もあったんだと思う。


それなりに人付き合いもしてきたし、バイトでは教える立場に立ったこともあった。

だから、登坂さんの立場も少なからず分かったんだ。・・・・新人は何かと世話がかかる、って。
 

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