俺のココ、あいてるけど。
◆誠治side.*:・゚
───『長澤、見るな!』
その声を聞いたとき、体中から血の気が引いていくのを感じた。
聞き慣れた名字を聞き間違うはずがなかった。
聞き覚えのある男の声は、間違いなくモッサだった。
気が動転して、頭の中は真っ白になって、思考回路は停止した。
それでも俺の体は反射的に麻紀から身を引き、目は声の主を探して右へ左へと動いていた。
数十メートルか先、街灯と街灯の間に2つの影を見つけたときは、今度は体が熱くなった。
見られてしまった、長澤に誤解されてしまう、早く事情を説明しなければ・・・・。
そう思えば思うほどますます体が熱くなって、2人に顔を向けたまま身動き一つできなかった。
そしてとうとう、そんな俺の目に一番見たくなかったものが入る。
モッサに目の前を覆われる、まさにその寸前───・・。
長澤の目から涙が落ちた。
その直後、モッサは軽蔑以外の何物でもない視線で俺を射抜き、長澤の肩を抱いて急かすようにその場を立ち去った。