俺のココ、あいてるけど。
それは、俺に言っているようであって、実は麻紀自身に言っているようでもあった。
麻紀の目からは大粒の涙がとめどなく流れ、頬を濡らしていた。
「・・・・今さらなんだよ」
けれど、麻紀の言いたいことはよく分かっているのに俺の口からは反対の言葉が出る。
どんな理由があれ、麻紀を抱きしめた事実は変わらない。
ならば、もう俺に長澤を好きでいる資格はない───と。
そんな思いだった。
いっそここで華々しく散ろうじゃないか、俺は取り返しのつかないことをしたのだから。
そう、投げやりにもなっていた。
すると───・・。
パァァン・・・・!
静かな駅前広場に大きな音が響き渡り、少し遅れて左頬に鋭い痛みが走った。
「そんな誠治は大嫌い!」
そして、間髪入れず麻紀の怒鳴り声が俺の耳を貫いた。
・・・・何が起きたのか、すぐには把握しきれなかった。
今まで麻紀は、何があっても人に手を上げることはなかった人だ。
それが今になってどうして・・・・。