俺のココ、あいてるけど。
 
「さて。そろそろ行きますか」


映画館を出たところで、モッサ君が車の鍵を取出しながら言った。

腕時計の時刻は午後5時。

肩にかけたバッグの紐にどうしても力が入ってしまう。


「うん」


あたしは一つ小さく息を吐いて、モッサ君の隣に並んで歩いた。

モッサ君は、緊張するどころかいつもと全然変わらない様子。

余裕がないのはあたしだけみたいで、そんなあたしはなんだかマヌケな人のように感じる。


つき合っているんだもん、自然なことで当たり前なこと。

そう何度も自分に言い聞かせてみたけど、緊張は高まるばかりで一向に落ち着いてはくれなかった。





少し歩いたところに、モッサ君が車を停めたパーキングがあった。

この車に乗ればとうとう・・・・。


「乗って。晩飯にはまだちょっと早いから、ドライブでもしながら腹減らそうぜ」

「そうだね、おじゃまします」

「どーぞ」


えいっ。

あたしは勢いをつけてドアを開けて、助手席に潜りこんだ。

覚悟を決めなきゃ、あたし・・・・。
 

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