俺のココ、あいてるけど。
 
「じゃあ、適当に走るから、寄りたい店とか腹が減ったら言って」

「うん、分かった」


そうして車は走りだした。

カーステレオからは、最近モッサ君がハマっているというアーティストの歌が流れはじめる。

モッサ君曰く『哀愁のラップがたまんねー』・・・・らしい。


それを聞きながら窓の外に目をやると、流れる景色は濃いオレンジ色に染まっていた。

その中を、高校生のかわいらしいカップルや学生同士のグループ、子どもの手を引くお母さんなんかが楽しそうに歩いている。


映画が終わった時間が帰宅ラッシュに重なったこともあって、道は混雑していたけれど。

音楽と街の様子が思いのほかマッチしていて、飛び交うクラクションも不思議と耳に入らなかった。


「あ・・・・」


10分くらい走ったところで、前に小百合と行ったお店を見つけた。

あの頃は“登坂さんと行きたい”なんて思っていたけど、それも今では遠い夢の話。


「ねぇ、モッサ君!あのお店ね、夏に友だちと行ったの!すっごい美味しいんだよ〜。クリスマスに一緒に行こうよ!」
 

< 356 / 483 >

この作品をシェア

pagetop