俺のココ、あいてるけど。
 
窓の先のお店を指差しながら、運転席のモッサ君を振り返る。

モッサ君はあたしの指の先をちらっと見ると「そうだな」と言って少し笑った。


「え・・・・行きたくない?」


もう少しいい反応が返ってくると思っていただけに、あたしはちょっと不安になった。

モッサ君は嫌いなのかな、こういうレストラン・・・・。


「違う違う。見るからに高そうだから、びっくりしただけ」

「うん、まぁ。それなりのお値段はするかなぁ・・・・」

「だろ? 貯金しなきゃ」

「あはっ!割り勘でいいよ〜」

「そんなわけにはいかねーよ」


「そうなの?」と聞くと「男として恥ずかしいだろ」という返事が返ってくる。

男とか女とか関係なく、楽しい時間を過ごせればあたしは満足なんだけど・・・・男の人ってきっとそういうものなんだ。

今まで割り勘が多かったから、モッサ君の台詞にドキッとした。


「かっこいいね」

「そうか? 店の外観で真っ先に貯金のことが浮かぶって、けっこう情けないと思うけど?」

「ううん、そんなことないよ」
 

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