俺のココ、あいてるけど。
だけど、唯一気を抜ける休憩中にまで顔を合わせてしまうと、どうしたらいいか分からなくなる。
どんな顔をしたらいいか、どんな態度をとったらいいか、本当に分からなくなる。
「どうした? 小銭ないのか?」
お財布を握りしめたまま動けないあたしに、登坂さんは不思議そうに聞く。
「はい。あ、いえ・・・・」
「どっちなんだよ」
「ない・・・・です」
こんなふうにおかしな会話になることもあって、登坂さんが近くにいるとなかなか心が休まらない。
何日か一緒に仕事をしてきたけど登坂さんは相変わらず無表情。
職場の人たちは笑うのに、登坂さんだけ笑わないんだ。
それに・・・・朝は決まってお酒の匂いもかすかにする。
大学時代からお酒の席があまり得意じゃなかったあたしは、それだけでビクビクしちゃうんだ。
「じゃあ、長澤は? ホット? ブラック? どれだ?」
「・・・・はい?」
縮こまっていると、今度は自販機を指差しながら登坂さんが聞く。
・・・・あ、あたしの分を? でも、どうして?