俺のココ、あいてるけど。
 
けれど、次の瞬間には、長澤の口からはそんな言葉が返ってきた。

“今はダメ”と・・・・。


「あたし、自分の力で立ち上がりたいんです。今までは、人に頼って寄りかかって・・・・。もっと強くなる必要があると思うんです」

「・・・・そうか」


長澤は必死な目をしている。

俺にも分かるよ、その気持ち。

だって俺は、そうやって一生懸命に変わろうとする長澤を好きになったんだから・・・・。


「だから、少し待ってください。今度はあたしから・・・・あたしからちゃんと言います」


そうか。

俺は黙って頷く。

長澤は長澤なりに“けじめ”をつけようとしているんだ。


「本当はあの女の人・・・・登坂さんの元カノさんですよね。もしかしたら、あれっきり会ってないんじゃないんですか?」

「・・・・え?」

「あたし、モッサ君に会って謝ってきます。だから登坂さんも、もう一度会ってちゃんと・・・・」


“後悔を残したままじゃ、きっと前に進めないだろうから”

そう言って、長澤は俺に向かってかすかに微笑んだ。
 

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