俺のココ、あいてるけど。
 
そう言って、長澤は先に休憩室を出ていった。

長澤は分かっていたんだ、店長が辞めるんじゃないかと心配していたことが・・・・。

大した奴だよ、本当に。





「登坂、長澤さんは!? どんな様子だった!?」


諦めて戻った事務所では、店長がソワソワしながら待っていた。

俺を見るなり急き込んで聞く。


「長澤にはもう一つ目があるのかもしれません。コーヒーどうぞ」


“落ち着いてくださいよ”という意味を込めて、店長の前に熱々のコーヒーを置く。

さっき落とした100円で買ってきたものだ。・・・・本当は長澤に買うつもりだったのだが。


「あぁ、サンキュー・・・・って、そんなことじゃないんだよ、登坂!長澤さんはっ!?」

「大丈夫です。店長が心配していることは、長澤は全く考えていないみたいですから」

「・・・・はっ?」

「だから“何があっても辞めませんから”だそうです。気づいていたみたいですね、長澤も。店長、すぐに顔に出ますからね」


そう言うと、店長は心底安心したように長いため息をついた。
 

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