俺のココ、あいてるけど。
 
「ごめん、いろいろ・・・・」

「あたしもごめん」

「ごめん」

「ごめん・・・・」


モッサ君もあたしも頭を下げたまま“ごめん”ばかりを繰り返す。

それ以外の言葉なんて、1つも思い浮かばなかった。

すると・・・・。


「あの〜、お水。お持ちいたしましたけど・・・・」

「あ、すみません」

「すみません」


アルバイトらしき女の子が水を持ったままおろおろしていて、あたしたちはそこでもまた、とっさに頭を下げて謝ったしまった。


「ご、ご注文が決まりましたらお呼びください」


笑顔を引きつらせながら持ち場に戻る女の子。・・・・ごめんね、びっくりさせちゃって。

心でもまた、謝った。

でも、その子のおかげで・・・・。


「ふ」

「ふっ」


変な緊張が解けて、お互い自然に笑えるようになった。

今度はありがとう、だ。


「で、今日は? 俺と会うこと、登坂さんに言ってきたの?」


すぐに席についたモッサ君は、メニューを眺めながら何食わぬ様子でさらりと聞く。
 

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