俺のココ、あいてるけど。
ここの本当の社員でもない俺が、一番手のかかる新人を任される。
ただでさえ毎日仕事が立て込んでいるのに、それに加えて指導係なんてやっていられないと思った。
だからあんな冷たい言い方・・・・。
早く自分の仕事に取りかかりたい気持ちもあって、事務的な会話で終わらせてしまったんだ。
「俺にだって新人のときがあったはずなのにな・・・・」
新人のとき、上についてくれる人がどれだけ頼もしいか。
俺はすっかり忘れていた。
右も左も分からないまま社会の中に飛び込んだとき、誰を頼るって一番身近で指導してくれる人に頼るのが普通だ。
少なくとも俺の周りはそうで、同期の奴もみんなそうだった。
叱られたり褒めてもらったり、そうしてきたから今の俺がある。
今の長澤にとったらそれは俺だ。
「泣くほど嫌な思いさせちまったみたいだな・・・・」
すっかり冷えたコーヒーを飲み干すと、口の中いっぱいに苦い味が広がった。