俺のココ、あいてるけど。
「でも俺、そんなにいい奴じゃないよ。仕事ばかりで麻紀を後回しにして、気持ちが離れていくのにも気づかなかった」
また切ない笑顔に戻る登坂さん。
その横顔に、あたしは何も言えなくなってしまった。
「もう1回誰かを好きになるのが怖かったのは、同じことを繰り返すんじゃないかって。別れ方をずっと引きずっていたから、それが怖かった」
「別れ方・・・・ですか?」
働きはじめてすぐの頃に聞かされた、あのこと・・・・かな。
噂話の“浮気された”って。
「そう。あの噂ほどひどくはないけど、浮気よりは振られたって言ったほうが合っていると思う」
寂しかったって。
いつも1人でご飯食べて、休みも合わなくて、デートもしなくなって・・・・もう耐えられないって。
麻紀さんはそう言って泣いていたんだって・・・・。
「俺が1人にさせすぎたんだ。麻紀の優しさに甘えっぱなしで、何も言わなくても気持ちを分かってくれてると思ってたんだ」
そんなの自惚れなのに。
そう言って、登坂さんは車の窓を少しだけ開けた。