俺のココ、あいてるけど。
 
綾ちゃんに後押しされるように、さらにあたしは言葉を続けた。


「そうして綾ちゃんが無言で背中を押してくれたから、あたしは登坂さんと正面から向き合うことができた。それで・・・・」


カサッ、カサッ。

エプロンをつける綾ちゃん。

ほとんど完成した仕事着姿は、あとは頭に三角巾をつけるだけ。

あたしはスッと息を吸い込み、短く吐き出した。


「それで昨日、ようやく想いを伝えられたの。登坂さん・・・・“好きになってくれてありがとう”って言ってくれて。あたしも、綾ちゃんに“ありがとう”なんだ」


そう言うと、三角巾をつける綾ちゃんの手が止まった。


「未来さん・・・・ごめんね。綾、嫌いになんてなってないよ。綾のほうこそ、嫌われることいっぱいして。・・・・ごめんなさい」

「綾ちゃん・・・・」


ためらうように振り向いた綾ちゃんは、すでに顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。

三角巾にきつくしわが寄る。


「綾、未来さんの力になりたかったんです。でも全然で。綾ができることっていったら、あれくらいしか・・・・」
 

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