俺のココ、あいてるけど。
 
さっそくキッチンを借り、シチューを鍋に移して火をかけた。

登坂さんの部屋のキッチンはほとんど使われた形跡もなく、調理器具も数える程度しかない。

あたしの部屋と作りは同じのはずなのに、妙に広々と感じた。


それから5分後───・・。


「どうぞ」

「おぉ、サンキュ」


温め直したシチューを登坂さんの前に置き、あたしはまた、向かい合うようにして座った。

さっきまでの煙草から一変、部屋の中に甘ったるい匂いが広がる。

その匂いに包まれながら、目の前の登坂さんをじーっと見つめた。


パクパク。パクパク。

よほどお腹が空いていたのか、みるみるうちにお皿のシチューは登坂さんの胃の中へ。

美味しそうに食べてくれるその様子は、あたしにとびっきりの幸せをもたらしてくれた。


「美味かった〜。長澤の手料理が食えるなんて幸せだ、俺」

「そんなこと・・・・。でも、嬉しいです。あたしも幸せです」


好きな人に料理を食べてもらう幸せは、小さいようでとても大きなことなんだよね。

それを今、すごく感じる。
 

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