俺のココ、あいてるけど。
 
これから先、何度登坂さんに食べてもらえるか分からないけど。

ずっと、ずっと、あたしが食べさせてあげられたらいいな。

・・・・そう思った。


「じゃあ、さっそく片付けちゃいますね。そしたら帰ります」


気づけば、時刻は深夜1時近く。

こんな夜遅くにシチューを届けるあたしもあたしだけど、食べる登坂さんも登坂さん・・・・だよ。

すっかり長居して申し訳なくて、あたしは立ち上がった。


でも・・・・。


「え、なんで?」


それを引き止める登坂さん。

酔いが回ってきたのか、充血しはじめた目で見つめられ、とたんに帰りたくない気分にさせられた。


「なんで、って・・・・。シチューのおすそわけに来ただけだし」

「ふ〜ん」

「ほら、もう遅いし、早く寝ないと明日に響くし」

「ほぅ〜」


けれど、気持ちとは裏腹に、口をつくのは帰る理由ばかり。

焦るあたしを面白がるように、登坂さんはニヤッと不適に笑って相づちを打った。


「そこまで言うなら帰っていいけど・・・・お礼、させろよな」
 

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