俺のココ、あいてるけど。
 
すると・・・・パチッ!

勢いよく目を開けた登坂さん。


「かなり感動ー。でも“さん”はいらなーい。はい、もう1回」


と、まるで先生みたいな口調で言って、力強い2本の腕であたしの体を引き寄せた。

とたんに顔が熱くなる。

狸寝入りの登坂さんにまんまとはめられて、猛烈に恥ずかしい気持ちが込み上げた。


「ほら、早く」


そんなあたしに絶対気づいているはずなのに、登坂さんは寝起きとは思えない強さでぎゅーぎゅーと抱きしめながらそう言う。

もっと紳士的な人だと思っていたのに、実際はそうでもない・・・・のかもしれない。


「早く呼んで」

「せ・・・・」

「そうそう、その調子」

「せ、せ・・・・」

「あともう一息」

「せ・・・・急かすなバカーっ!!」


ぽかっ。

名前を呼ぶ代わりに、バカと一緒に動けない体を駆使して頭突きを一発、お見舞いしてみる。


「起きてたんじゃないですかっ!もうっ!ひどいです!」


まだまだあたしは、彼を“誠治”と呼べるには時間がかかりそう。
 

< 476 / 483 >

この作品をシェア

pagetop