俺のココ、あいてるけど。
 
そのあとは、痛がる登坂さんの腕からなんとか這い出し、気持ちを落ち着かせるために深呼吸。

今まで“登坂さん”と呼んできたもの昨日今日で“誠治”に切り替えるのは、あたしにはなかなか難しいんだもん・・・・。

そうして1人でむくれていると、またあのハスキーボイス。


「未来」


初めて呼んでくれたあたしの名前に思わず振り向けば・・・・。

ベッドに腰掛けた登坂さんが、ちょっとバツが悪そうな顔で腕を広げて待っていた。


「俺の腕の中、あいてるけど・・・・未来、来る?」


本当にもう、この人は・・・・。

でも、そんなところもひっくるめて、あたしはこの人の・・・・誠治の全部がたまらなく好きなんだ。


「・・・・バカ」


そう言って、あたしは温かい胸に顔をうずめた。

あたしも素直じゃないから誠治のことは言えないけど・・・・もうちょっとね、もうちょっと。

あと少し待ってもらえたら、ちゃんと“誠治”って呼ぶよ。

今は照れくさくて言えそうにないから、これで許してね。


「好き。誠治・・・・さん」
 

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