俺のココ、あいてるけど。
 
新人指導で1ヶ月、いつも長澤は俺の隣にいて、今日の飲み会でも隣同士で部屋も隣・・・・。

偶然とはなんて恐ろしい。


「マジかよ・・・・」


俺はしばらく、途方に暮れた。










それでもやっぱり、このままにしておくわけにはいかず・・・・。


「長澤、着いたぞ。起きろ!」

「ふぁ〜い・・・・」


また長澤を背負って部屋の前まで連れてきてやった。

少し乱暴に揺らすと、寝ぼけた声で返事をする。


「鍵は?」

「あります〜、もう寝ます〜」

「あぁ、玄関だけでは寝るなよ」

「へ〜い」


“へ〜い”って何だ“へ〜い”って・・・・まぁいい。

おぼつかない手つきで鍵を開け、フラフラと部屋に入っていく長澤を見送ってから、俺もようやく自分の部屋に帰った。


長澤はきっと、今日のことは覚えていないだろう。

俺に背負われて、部屋まで連れてきてもらって、あんな寝言を言ったことも・・・・。

でも俺は、それでいいと思った。

もう指導係は終わったのだから。
 

< 62 / 483 >

この作品をシェア

pagetop