俺のココ、あいてるけど。
新人指導で1ヶ月、いつも長澤は俺の隣にいて、今日の飲み会でも隣同士で部屋も隣・・・・。
偶然とはなんて恐ろしい。
「マジかよ・・・・」
俺はしばらく、途方に暮れた。
それでもやっぱり、このままにしておくわけにはいかず・・・・。
「長澤、着いたぞ。起きろ!」
「ふぁ〜い・・・・」
また長澤を背負って部屋の前まで連れてきてやった。
少し乱暴に揺らすと、寝ぼけた声で返事をする。
「鍵は?」
「あります〜、もう寝ます〜」
「あぁ、玄関だけでは寝るなよ」
「へ〜い」
“へ〜い”って何だ“へ〜い”って・・・・まぁいい。
おぼつかない手つきで鍵を開け、フラフラと部屋に入っていく長澤を見送ってから、俺もようやく自分の部屋に帰った。
長澤はきっと、今日のことは覚えていないだろう。
俺に背負われて、部屋まで連れてきてもらって、あんな寝言を言ったことも・・・・。
でも俺は、それでいいと思った。
もう指導係は終わったのだから。