俺のココ、あいてるけど。
 
「なんつー顔してんだよ、長澤。俺だって飲んで記憶を無くすことなんてしょっちゅうだ。心配するな、粗相はないから」


今のあたしには“顔面蒼白”って言葉がぴったりかもしれない。

そんな顔を見て思わず吹き出す登坂さんは、心配するなと言った。


「それより時間は大丈夫か? 顔も洗わないでお客様と接するのは社会人として失格だぞ」

「そうでした!すみません、すぐに準備します!」


そして、すぐに仕事の顔になった登坂さんにそう言われ、あたしは急いで洗面所に向かった。


「遅刻するなよ!お先に!」

「ふぁい!」


玄関先で登坂さんの声。

登坂さんは一足先にスーパーに向かうみたい。

歯ブラシを口に入れたまま、あたしはそう返事をした。





朝の慌ただしい時間を割いてあたしに声をかけてくれて感謝です、登坂さん。

もし登坂さんがベルを押してくれなかったら、きっと遅刻だった。


───「社会人たるもの、どんなに飲んでも遅刻はするな」

なんとかお父さんの教えを守れそうです、あたし・・・・。
 

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