俺のココ、あいてるけど。
 
登坂さんは怒った。

今までにこんな顔をした登坂さんは見たことがなくて。

怖くて目も合わせられなければ、言葉も出ない。


“最低”・・・・。

あたしにもそれはよく分かる。

1人で全部背負い込もうとして、誰にも頼ろうとしない。そんなんじゃ、そう言われたって仕方がない・・・・。


「あ・・・・怒鳴ったりしてすまなかった。何があったんだ? 俺はうまくやっていると思っていたが、実際の長澤はこの有様だ。話してくれるか?」


登坂さんはそう促す。

言ってもいいのかな・・・・彼女さんのこと、噂のこと。

それで登坂さんは傷つかない?


「どうした?」

「あの・・・・」


やっぱり言えない。

あんな最低な噂、登坂さん本人の耳には入れられない。


「はぁ・・・・。俺は長澤の指導係だったんだ、1ヶ月も一緒にいれば情が湧く。楽になれ、長澤」


そんな思いで唇を噛みしめるあたしに、登坂さんは1つため息をついて言う。

“楽になれ”と・・・・。





「登坂さん、あの───・・」
 

< 77 / 483 >

この作品をシェア

pagetop