俺のココ、あいてるけど。
そうして長澤の目が覚めるまでの間、俺はずっと手を握っていた。
麻紀の手はこんなに荒れていなかったな、とか、ずいぶん小さな手だな、なんて思いながら・・・・。
それからしばらくすると、ようやく長澤が目を開けた。
意識はまだはっきりとはしていないが、それでも“目が覚めた”という現実に安心する。
今まで眉間にシワを寄せていた俺の表情も緩んだくらいだ。
それからは、長澤が話してくれた通り、俺が感じた通りのこと。
「登坂さんにコーヒーをごちそうになった日、噂話を聞かされたんです。・・・・登坂さんのこと」
「俺のこと?」
「はい。元カノさんの・・・・」
麻紀のこと・・・・だから“なんでもない”なんて言ったんだ。
俺を守ろうとして?
俺が傷つくと思って?
長澤はバカだ。もうとっくに吹っ切れていることなのに・・・・。
「それで?」
「それで・・・・長くつき合っていた彼女に浮気されたとか、次に狙っているのはあたしだ・・・・とか言われて」
長澤は申し訳なさそうに話した。