俺のココ、あいてるけど。
「そういう噂、あたし前から本当にダメなんです。だからつい言っちゃって・・・・」
「何をだ?」
「・・・・“噂話の何が楽しいのか分かりません”って」
そうか、だからか。
話すまでにためらっていた理由、あの声の理由、合点がいった。
「バカか、お前は。俺は噂話なんて聞いても気にならないし、もう吹っ切れたんだ。長澤が気に病むことじゃなかったのに・・・・」
「でも・・・・」
そう言って顔を上げた長澤は、俺に訴えかける。
“登坂さんは本当に大丈夫?”
「大丈夫だ。サンキューな」
「いえ・・・・」
俺は長澤の頭に手を置いた。
長澤は大した奴だと思う。
噂話なんて聞き流してしまえばいいのに、正面からぶつかって俺を守ろうとしてくれた。
そんな度胸、俺にはない。
「コーヒーの恩か?」
ふと思い立って、俺はそんなことを聞いてみた。
「それもですけど・・・・登坂さんはあたしの指導係ですから」
にっこりと笑って答えたその言葉に、俺の中で何かが弾けた。