俺のココ、あいてるけど。
 
隣に座っていた人がペンを落としたらしく、それがあたしの足に当たったみたい。

あたしは、その人に拾ったペンを渡そうと顔を上げた。

・・・・あれ? この人、どこかで見たような気がする。気のせい?


「ありがとうございます・・・・って・・・・えっ!? 長澤?」

「・・・・はい?」

「ほら、大学のときに一緒にバイトしてた孝弘だよ、加藤孝弘!」


彼は目をキラキラさせながらペンを握りしめて興奮気味に言う。

加藤? 孝弘? ・・・・えーっと。


「覚えてない? 眼鏡で天パの!・・・・冴えない奴だっからなぁ、記憶にないか」


あたしが思い出せないでいると、彼は残念そうに笑った。

眼鏡で天パ・・・・まさか!


「もしかして・・・・モッサ君!?」

「ははっ。当たり。ずいぶん変わったでしょ、俺」

「うん・・・・」





モッサ君───・・。

モッサ君といえば、今年の2月まで前のバイト先で一緒だった人。

髪が天然パーマでもっさりしていたから“モッサ君”というあだ名で呼ばれていた。
 

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