雪だるまとペガサス
アニフが瞬きをした次の瞬間、雪ダルマはその背中にちょこんと乗っかっていました。


アニフは滑らかなトーンで雪ダルマに話します。
「あなたの生みの親、ユキムラさん家のリッカお母さんは今、病に臥せっています」


雪が空から、ちらちらと降り始めました。


「人間の医学では治る見込みの無い、そんな病です。病を治すには『伝説の白雪花(しらゆきばな)』を必要とします」


雪ダルマが言葉を発しました。
「お母さんは治るの?」


アニフは答えます。
「白雪花の花弁を食べさせる事が出来れば治ります。それ以外では無理です。何故なら病の原因は『雪呪い』に依るものだからです」


雪ダルマは悲しげな声で尋ねました。
「一体誰がそんなひどい事をしたの?」


アニフは辛そうな、重たい声で答えます。
「雪に関係した『人ならざりし者』の仕業だとは思いますが……特定は難しいでしょう」


雪ダルマは強い意思を漲(みなぎ)らせて言いました。
「ボクはお母さんを助けたい。アニフさん、ボクを連れて行って」


アニフは喜びいななき、雪に覆われた地面を幾度か蹴り付けました。


鼻から盛大な息を吹き出すと、興奮を抑えた、それでいて1オクターブ高い溌剌(はつらつ)とした声で言い放ちます。
「宜しい。それでは行きましょう。白雪花を捜し当てる旅へ。さあ、長い長い旅の始まりですよ」



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