不思議な家のアリス


「恥ずかしい話、俺も今は落ち着いたけど昔はめちゃくちゃやっててさ。親父さんにはすげぇお世話になって…」



圭吾さんが話し出す。

どこか懐かしむ様に。



「俺ら皆家庭がちょっとゴタゴタしててさ。警察に世話んなる度、親代わりに迎え来てくれたな…。


頭下げんだ、赤の他人の俺らのために。何度も何度も…。こんなどうしよーもねぇ俺らの為に…。
"こんな事する奴じゃ無いんです"ってさ…。最初は"何分かった気になってんだよ"ってムカついてたな。





誤認逮捕されかけた時も、アイツだけは信じてくれた。

"こいつがやってねぇっつったらやってねぇんだ!"とか言って、お巡りの胸ぐら掴んで怒鳴った事もあったな…。それであいつが捕まりかけてんの。

ははっ、バカだべぇ?こんな俺らの為によ…。




卒業してからもさ、ちょくちょく家に弁当持って顔出して、"変わりは無いか"、"ちゃんとやってんのか"って聞いてくんだ。


普通ならちゃんとやってる訳ねぇって思うじゃん?
でも信じてんだよ…アイツ…。



親父さんは、俺らにとっても親みたいな存在だった」



…話の途中から、圭吾さんは泣いていた。

皆も、泣いていた。


私まで、何だか泣けてきちゃったよ。




…パパ?聞いてる?私、パパのこと誇りに思うよ。
< 10 / 68 >

この作品をシェア

pagetop