不思議な家のアリス
「わりぃ、何か湿っぽくなっちまったな。」
上を向いて手のひらで涙を拭い、圭吾さんが私に向き直った。
その顔は何だか真剣そうな面持ちで。思わずドキッと心臓が跳ねた。
「今日来たのは、勿論線香あげる為なんだけど、実はもう一つ…」
もう一つ、何…?
圭吾さんは言葉を選ぶようにポリポリとこめかみを掻いている。
何だかとんでもない事を言われるような気がして、身構えてしまう。
だって、物凄く言いにくそうにしてるから。
私がゴクン、と生唾を飲み込んだ瞬間、その口が開かれた。
「俺達と一緒に暮らさねぇか?」
………………。
え…?
え、ええ!?υ
今、"一緒に暮らさないか"って言った!?υ
私が!?圭吾さんと!?υ
何のために!?
頭の中が混乱する。
パパを大切に思ってくれてたのはよく分かったけど…それが何故そうなる!?υ
もしかして私にパパの代わりをして欲しいとか!?
無理です無理です!!私にはそんなこと出来ません!!
軽いパニックを起こしていると、
「このマンション、賃貸だろ?」
と秋夜が言った。
…それが何か?