不思議な家のアリス
嵐の後の静けさ、と言うのはこう言うものなのか。
シーンとする部屋が何だか物凄く寂しく感じる。
先程のチラシを眺め、仏壇の前に座り込む。
「パパ?今日パパの昔の教え子さん達が来たよ。何だかちょっと怖い感じの…。だけど、温かい人達だった。
パパ…私この家から出て行かなきゃいけないの?
そしたら、どうすれば良いの…?」
額縁に入った写真の中のパパに語りかける。返事は無い。…当たり前だけど。
暫くそうして居ると、電話が鳴った。
「はい、有栖川です」
『あ、大家の林ですけど…この度は御愁傷様でした…。』
嫌な予感がする。
さっき秋夜が言った"未成年のお前名義じゃ借りれない"と言う言葉がよみがえる。
『実は…とても言いにくいんですけどね…』
そう言って大家さんは本当に言いにくそうに話し始めた。
「…はい、分かりました。」
―ピッ
少し乱暴に受話器を置く。見事予感は的中して、今月一杯で出て行かなきゃいけない事になった。
…もう後3日しかない。
…社会の冷たさを実感した。
そりゃ大家さんも仕事だし、しょうがないとは思うけど…後3日なんて。