不思議な家のアリス
翌日、約束(?)通り圭吾さんが家に来た。
両脇に折り畳まれた真新しい段ボールをたくさん持って。
「じゃ、明日までにこれに身の回りのモンだけ詰めといてな?家具とか食器類は明日詰めながら運ぶから、そのままで良いから。」
「あの…私、やっぱり…」
言葉を選んでいると、「な?」と圭吾さんに凄まれた。昨日の怒鳴り声が脳裏を過る。
「はっ、はい。」
反射的に返事をすると、彼は満足そうに笑った。
「大丈夫だよ。とって喰いやしねぇし、美波ちゃんの部屋にはちゃんと鍵も付けといたから。」
そう言って私をなだめる様に目線を合わせ頭を撫でて、柔らかく微笑む圭吾さん。
…もう覚悟を決めるしかない。どうせ断っても行く宛なんてありゃしないんだ。
頼れる人に頼るしかない。
覚悟を決めて、コクンと小さく頷いた。
「親父さんに誓って、成人するまでは何があっても俺が必ず守るから。」
ポンッと軽く頭を叩き、「じゃあな」と圭吾さんは帰って行った。
不安は山程残るものの、もう後には戻れない。
パパ、見守っててね。私、逞しく生きていくよ。
深呼吸して、荷造りを始めた。