不思議な家のアリス


黒木君が備長炭唐揚げを箸で持ち上げて、口に放り込んだ。凄い勇気だ。




ゴリッゴリッゴリッゴリッゴリッ...




彼の顎が動く度、まるでコンクリートでも噛み砕くかの様な音がする。

すんごい歯が丈夫になりそうだ。



「どうだ?」

新妻が旦那さんに聞くみたいに、秋夜が目をキラキラさせて聞いた。

「ん。」
"ん"って……"ん"って何!?υ
上手いの!?不味いの!?どっちなの!?


表情を読もうとじっと見つめてみるが、全く読み取れない。



仕方なく、私と圭吾さんも口に運んだ。




ゴリッ…




「「硬っ!υ」」




汚いけど、思わず吐き出してしまった。

何をどうやったら鶏肉がここまでカチコチになるワケ!?υ




「失礼な奴らだな!せっかく人が作った料理を!」



料理って言えないよこんなの!υ

もはや"鶏肉はどこまで硬くなれるか"とかそう言う類いの実験の域だよ!υ




「圭吾、もう秋夜に料理させんのやめようぜ。」


春が鶏肉を手で持って、もう片方の手でつつきながら呆れ顔で言った。




「いや、料理覚えさせねぇと…。ここ出た時にこれじゃ困るだろυ」



ここを出た時…?


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