不思議な家のアリス
「良いです。分かりました、何となく…。」
光の消えた圭吾さんの瞳。
その瞳の奥には、きっと大きな悲しみが隠れてるんだ。
もう充分だと思った。
私が興味本意で聞くような事じゃない。
私の言葉に、顔を上げた圭吾さんの表情はもう普段の彼のものだった。
「ま、平たく言えば蒸発だな。」
だけどそう言って自嘲気味に笑う圭吾さんは今にも消え入りそうなぐらい儚げで。
彼の…彼らの心にある深い傷を知った気がした。
それがどれ程の痛みになって残っているのかは分からないけれど。
「ま、そんなこんなでここに住んでる奴らは全員一人ってワケ。」
「…全員?」
全員て何?ご両親がいないなら、圭吾さんだけなんじゃないの?
「あぁ。クロも秋夜も春も勇志も。皆一人だ。」
…え?
今、"クロも秋夜も春も勇志も"って言った?
まさか。。
「五人で住んでるんですか?」
違うと言って。
頼むから違うと言ってくれ。
「?あぁ。言ってなかったっけか?」
。。。言ってなかったですよ。そんな話、今の今まで聞いてないですよ。
良いけどね、うん。もうどうしようもないし。
バカ三人(秋夜・春・勇志)を見ていると暗くならずに済むし。
何とかやっていけるだろう。
……多分。。。
こうして私の、一人ぼっち達の集まるちょっと不思議な家での生活が幕を開けた。