不思議な家のアリス
部屋に戻り、用意しておいてくれた大きなベッドに横になる。
床に置いたままになっていたパパの黒革の手帳が、"読んでくれ"と光を反射させて、存在をアピールしている……気がする。
きっとあの日記帳には、五人の過去の傷の事も書かれているはず。
…気になる。物凄く。
でも…読んじゃいけない気がした。
人の過去、ましてや傷を知るのは、その人の口からじゃなくちゃいけない気がした。
手帳を机の引き出しにしまい、再びベッドに潜り込んだ。
―ガチャ
扉の開く音。振り向くと、そこには勇志くんが立っていた。
何やらニヤニヤと笑っている。
「今日俺、王様なんだよね。」
…?だから何?まさか、自慢しに来たワケ?
案外可愛いとこあるな、なんて思っていたら。
「とりあえず、何か面白い事やれよ。」
「………はい?」
「笑わせろって言ってんだよ。」
む、無茶ぶり!?υ
て言うか面白い事って何!?υ私、人を笑わす才能なんて丸っきり無いんだけど!?
「……コマ●チ、コ●ネチ」
それでも一応やってみる。かの有名なコマネ●を、ポーズ付きで。
「…はは…。」
乾いた笑い声と、哀れみの視線。
や…やめて!
自分が凄く情けなく、恥ずかしくなるから!!
そんな気を使う位なら、最初から無茶ぶりしないで!せめてけなして!!
「けなしてよ!!」
…言葉に出てしまった。しかも、主語がない。
なんだか誤解を生みそうな言葉だ。。