不思議な家のアリス


身動きが取れないまま、大声で叫ぶ。



どうにか離れようと身をよじると、ゆっくりと彼の形の良い目が開かれた。



唇は、まだ重なったまま。




「…………誰?」




まだ眠たそうに目をうつらうつらさせる黒木くん。


こんな状況にも彼は全く動じない。




…"誰?"じゃないよ…"誰?"じゃー!!!!


私のファーストキスがぁああああ!!!!泣





首元に回された手が緩んだので、俊敏に離れてベッドに座り込んだ。




「あぁ…おはよ。」




ようやく私だと認識したらしく、黒木くんが目をこすりながらベッドから起き上がった。




…"おはよ"って…

この人なに!?


何でそんなシレッとしてるわけ!?




「私のファーストキス返してぇええええ!!」




つい口から漏れた心の叫び。



「…知らねぇよ、お前がしたんだろ?」



興味無さげにふぁあ~、とアクビをする黒木くん。



私がしたって……キスを!?



「してないわよ!!いつまでたっても起きて来ないから起こしに来たら…ベッドに引っ張りこまれて…」



誤解を解こうと興奮気味に説明する。


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