不思議な家のアリス


目が痛くなる程わんわん泣いてた…ら。






「ストーップ!」







突然男が大声で言った。




…何?泣いて良いって言ったのはそっちじゃない。






―…ずびっ





鼻水をすすり、涙を手で拭った。

男を見ると、腕時計に目を落としている。




「泣いて良いのは三分までだ。」




…時間測ってたの?υ




「戦時中の兵士達が、死と直面しながらどうやってその恐怖心に打ち勝っていたか知ってるか?」





…意味が分からない。



私、兵士じゃないし。
今、戦時中じゃないし。

ましてや今有るのは恐怖心じゃなく悲しみだけ。



ちんぷんかんぷんな事を言い出したこの男のせいで、ようやく泣けたのに涙は引っ込んでしまった。




「恐怖心を捨てるには、心を制御せずに三分だけ恐怖心に浸ることだ。そうすると、不思議と三分後には恐怖心が消える。」



「…私、別に恐怖心なんか無いんだけど。」



「だから、悲しみとか、寂しさとか、そう言う気持ちも三分だけ浸るのが大切なんだよ。三分以上浸っていると、戻って来れなくなる。スッキリしただろ?」



…確かに、不思議とスッキリしてるかも。


悲しみが消えた訳じゃ無いけど、何だか少しだけ前向きになれたかも知れない。


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