クローゼット
ナオは笑いながらそう言った。
『ナオ』なんて呼び捨てで呼んでいるが、彼女は私よりも一回り以上年上だ。結婚もしている。

私が最初にこの雑貨店を訪れたのは短大生の時だった。ちょうど私の通う短大の近くだったので、授業の空き時間などによく買い物をしに行っていた。
そして毎週変わるこの店のディスプレイがとてもかわいくて、私はすっかりファンになってしまったのだ。
度々来店するうちに、私と彼女はたわいもない会話をかわすようになった。
最初は「この時計かわいいですね」とか天気の話とかほんとにそんなものだった。でもそんな会話でも何となく彼女とは波長が合うような感覚があった。
私は彼女との会話がとても楽しくて仕方なかった。そして段々お互いのプライベートな話もするようになっていった。
私がお店に行く時間は午前中が多かったのでお客さんも少なかったせいもあるかもしれない。
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