material girl
「しらばっくれんなよ。本当は知ってたんだろ?いい子ぶるのもいい加減にしろよ!本性表せよ、兄貴のコトも、本気じゃなくて、遊びだったって言えよ…」
航輝が、今にも泣き出しそうなのを、こらえているみたいだった。
あぁこの人も、あたしと同じなんだ。
この5年間、あたしを憎むことで、バランス保ってきてたんだ。
だったら…
「そうだよ。サトシのことは、ただの遊びだった。その他大勢のうちの一人にすぎなかったのに、死んじゃうんだもん。後味悪くてさぁ、忘れらんねーつーの。」
笑いながら、タバコに火をつけるあたし。
航輝が望むなら、あたしは悪になるよ。
それでバランスとれるなら。
あたしが他の男でバランスとってきたように。
ふぅっとタバコを一口吸った後、あたしは続けた。
「で。あんたはあたしに復讐したいんでしょ?何でも言うこと聞くから、好きにしたら?」
あたしは、覚悟を決めて、目を閉じた。
何をされても、大丈夫。
5年前のあの日、あたしの心は停止した。
あの後から、あたしにとって、キスやセックスは、愛を確かめるものじゃなくて、ただの行為でしかない…
何の意味も持たない。