material girl
「麻衣は関係ねぇよ。あんたを見たのは、葬式の時だよ。麻衣からあいつを奪った女が、どんなやつか見てやろうと思ってた。そしたらあんたは葬式で涙ひとつ流さなかったんだ、悔しかったよ…」
「そっか、あの時…あたし、涙も流さなかったんだ。」
葬式の時の記憶は、まるで記憶喪失にでもあったかのように、記憶がない。
そこだけ真っ白で、何も思い出せない。
ただ、現実だなんて思えなかったことだけは、ぼんやりと感覚がある。
でも、誰が来ていたのか、知らなかった。
自分が泣いていたのか、そんなことさえ、分からなかった。
あそこにいたんだ。
当たり前か、家族なんだし。
「…んだよ、それ。自分のことだろ?んで覚えてねーんだよ。」