material girl


航輝は、無言であたしの言葉に頷いた。

彼はきっと、もう大丈夫。

そう思った。

今度は、麻衣子さんへの思いが、彼を救ってくれるような気がした。

麻衣子さんは、きっと航輝を救える。

彼女は、とても強い人だから。

あたしは、強くなりたくても、強くなれなかった。

思い出は、時がたてばたつほど色あせていく。

悲しみでさえ、忘れてく。

それが辛い…


一生悲しみを背負って、生きていきたかった。

ずっとずっと、思い出せる距離に、いてほしかった。

消えていく…

確実に、あたしの中から消えていく彼を、引き止めることなんて出来なくて。


愛なんて、いつかは消えてしまう、儚いモノだと知った。


信じるから苦しむの。

信じなければ、何も怖くない…



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