material girl
「パパの本当の父さんと母さんの話しはしたっけ?」
パパがあたしに聞く。
「うーん、確かパパが小さい時に死んじゃったんだっけ?」
「あぁ、そうなんだ。パパはまだ小さかったから、父さんと母さんの記憶がほとんどないんだ。それが昔はたまらなく悲しかったよ。出来るなら、全てを鮮明に覚えていたかった。目を閉じたら、目の前にいるかのようにね。そしたら寂しくなんかないのにって。」
あたしの中に、パパの感情が押し寄せる。
この5年間のあたしは、ずっとそうだった。
忘れていくことが苦しくて、思い出すたびに、曖昧になっていく記憶が悲しくて。
考えないようにした。
奥に閉じ込めて、けして開けないようにしてた。
そうすれば、薄れていく記憶を知らなくてすむ。
何も感じなくてすむから…