material girl


「パパは、ママと、ママの両親に救われたけど、同時に、最初は怖かったよ。このまま、ママ達香月家族を愛してしまったら、本当の父さんと母さんと、そして生まれてくるはずだったパパの妹の居場所がなくなっちゃうってね。40数年生きてきた中で、物心ついた頃から父さん母さんと一緒に過ごした時間は、ほんの数年しかなくて。それでも、今でも一番大切な人達だよ。彼らの場所を奪える人なんて、誰もいない。」

パパが、あたしを目を見据える。

ママが、あたしの手を握る。

「でもパパは、香月夫妻のことも、本当の両親だと思ってるよ。やっぱり、育ててくれたのは彼らだからね。パパには、両親が4人いるんだ。2人しかいちゃダメなんて、そう思うから苦しいんだよ。人生の中で、愛する人は、一生涯で一人の人もいれば、そうじゃない人もいる。サトシ君のことは、永遠に愛したままでいいんだよ。忘れていく記憶もあるけれど、ずっと消えない記憶もある。忘れていくことを恐れなくてもいい、ちゃんと彼は心に生き続けるから。そして、他の人を愛したって、けして彼の場所はなくならないよ。大丈夫。」


パパの言葉は、何よりもあたしの心に響いた。


サトシは、あたしの心の中で生き続ける…


記憶の中じゃなくて。

心…


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