material girl
リビングのテーブルには、キレイに並べられた朝食があった。
「パンケーキっ!久しぶりー♪」
はしゃぐあたしを見て忍成が笑う。
「昨日かなり迷惑かけたみたいだから、そのお詫び。また借りが増えちゃったみたいだね☆」
彼が素直だと、なんだか調子が狂う。
イヤミばっか言ってくれないと、どう反応していいか困るんですけど。
あたしは小さく頷いて、食卓につく。
スクランブルエッグにベーコンとソーセージ、ハッシュドブラウンをお皿にのせて、できたてをキッチンから忍成が持ってきて、あたしの向かいに座る。
「ihopeのメニューみたい…超懐かしい。」
「実は昨日の微かな記憶の中で、バンドメンバーが言ってたんだよね。昔はよくihopeってレストランにまだ幼い君達兄妹を連れて、パンケーキセットを食べてたってね。」
彼があたしの為にこの朝食を作ってくれたと思ったら、たとえ昨日のお礼だとしても、なんだか嬉しかった。
「…じゃあこの朝食で昨日のコトはチャラにしてあげます、いただきます。」
照れくさくて、可愛くない言い方をしてしまうのは、昔からで。
あたしは忍成の顔を見ずに朝食を食べはじめる。
「じゃあ、僕もいただきます☆」
そう言って、忍成も静かに食べはじめる。
穏やかな空気。
「…おいしい。」
自然と出てきた言葉に、忍成が笑う。
いつもの営業用スマイルじゃなくて、眩しい笑顔。
ドキッとするからやめてほしい。