material girl
「いや、別に何も聞いてないけど。今朝、麻衣子さん、航輝クンのことだけ名前呼び捨てで呼んだじゃん?あたし、麻衣子さんのコトは前から知ってるけど、初対面の相手を呼び捨てで呼ぶような人じゃないし。あたしでさえ、まだ"ちゃん"付けだし。だから相当親しいのかなって思っただけ。」
あたしは近くにあったビールを飲みながら言う。
うん、うまいっ!
お酒は好きっつーか、アメリカいた時は、毎晩パーティーでバカ騒ぎして、飲んでたから、慣れ??
「へぇー、リサちゃんするどーい!よくそんなの気がついたね。」
ももちゃんが感心しながら、頼んであったカシスオレンジを飲む。
航輝クンが、顔を赤らめたまま、口を開いた。
「そっか。それで…。えっと、麻、社長とは確かに知り合いなんだ。昔から知ってる。でも、実はこの会社を選んだのは、それが理由じゃなくて…」
言葉を濁してから、思いきったように彼は続けた。
「実は、リサさんに会いたかったからなんです!社長から、リサさんが今年うちに入社するって聞いて、それで。なんかストーカーみたいですよね、すいませんっ!」
彼は真っ赤になって、うつむいた。
「うそーっ、あの中村航輝もあたしと同じような人だったなんてっ!あたし達気が合うかも~♪あたしも忍成俊介さんに会いたくてこの会社入ったのっ!彼の元で働けるなら、もう死んでもいいっ!って思って。すっごい分かるよー、航輝クンの気持ちっ!」
…なんか二人で盛り上がっちゃってますけど。
あたしに会いたくて??
ってか、この業界じゃ、あんたのが凄い人じゃんっ!
逆ならまだアリだけど、そんな理由で将来左右されちゃっていいワケ!??
あたしにはまっったく理解出来ん。