愛が呼んだもの

さあ、ついにこの日。

3月11日。

今日は卒業式。

卒業証書を次々と生徒が受け取る。

アタシの名前も呼ばれる。

式が終了したら、楽しいのはこれから。

洋樹に写真を撮ってもらったり、友達と廻ったり…。

今までの高校生活は楽しかったけど、短かったように感じた。

アタシはそれが、洋樹といっしょにいたからだと思えた。

卒業式の日、アタシは泣かなかった。

それから…、ただただ洋樹と2人で旅行のパンフレットとにらめっこ。

旅行の計画を立てたりした。

卒業しても、何も変わらなかった。

なんて思っていたら、ついに、旅行の日がきた。

「優紀ちゃんってさー。卒業式泣いてなかったね。」

電車の中で、洋樹が急に言った。

「ああ、アタシあんまりあーゆー場では泣けないんだよねー。」

中学のときもそうだったし。

そーいうと、洋樹は、

「いーや!それはちがうね。」

なにが?

え、なにが??

「だって優紀ちゃんが、

(えーだって、仲いい友達とはいつでも会えるしさー。)

(洋樹とは高校もいっしょだし。泣く理由がないでしょー。)

って言ってたじゃん。」
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