愛が呼んだもの
それから、いっぱいまわって、お土産も買って、楽しくすごした。

「なんかさー。ここんとこいつもより会話してるよね。」

「そお?」


「うん、前よりずっと。別れるって決めてからは、特に…。」

あ、空気が少し重くなった。

「はは。思い出話に花が咲いてたのかなー…。」

アタシは洋樹が話すのを遮って、

「最初の頃はさ。お互いのことよく知らなくて…だから知りたくて。喋っても喋っても足りないくらいだったよ。」

といった。

本当にその頃は、初々しくて、アタシたちは知ることにいちいちドキドキしていた。

アタシはそのドキドキが気持ちよかったりする。

「きっと今はお互いのこと、知りすぎちゃって…話すこともなくなっちゃったんだろうね。」

きっと…、6年は長すぎてお互いがお互いの中に占める比重が小さくなってっちゃったんだ。

まるで、日常の些細なひとコマみたいに。

「あ。洋樹!梅祭りだってー」

あちらこちらをまわっていたら、梅祭りのポスターが貼られていた。

「へーいいね、この辺?」

「んー、あ。2キロ歩くみたい。」

「2キロか。」

「「………。」」

アタシたちは顔を見合わせた。

「行く?」

「行くよね?」

やっぱり意気投合していて、笑い合った。

「さすが優紀ちゃん。分かってるねー。」

「えー?」

アタシたちは手を繋ぐ。
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