その瞳に…魅せられて。






飛び散った黒き羽根は…まだ数枚、
空を舞っていた。


翼は傷付き…背から血が流れ
腹部には刀が突き刺さったままのジキルは…
貫通するのも構わず…
ルアンを強く抱きしめていた。


「……怪我は…ない、か?」

途切れ途切れになる声は
聞こえないほど小さい…。


「何故…早く…こうしなかった?」

苦痛に耐えられずか…
声が震えているのがルアンにも分かる…。


「早く…殺せば、…いいものを」

そう力なく笑うジキル…
ルアンは上を向き…その時
初めてジキルの顔を見た。


弱々しく…微笑むジキルを…。






< 182 / 233 >

この作品をシェア

pagetop