愛しシンデレラ
歩いて五分の、見慣れた学校に足を踏み入れる。
私は南校舎、そして春樹は北校舎へ。
春樹がいなくなったのを確認し、カバンに無造作に詰め込んだ手紙を取り出した。
「…かわいーの」
ピンク色の便せんは、いかにも女の子が好きそうなハート柄がついていて。
しかし、そのピンク色の便せんは、いきなり私の視界から姿を消した。
「これ、俺の」
「え…?佐倉くんの?」
「うん、そう」
にっこりと笑う佐倉くんは、私のクラスの人気者で。
優しく、温かい彼の周りには、自然と人が集まる。
確かに佐倉くんの雰囲気はピンク色っぽいけど…
明らかに、その便せんは女モノで。
「佐倉くん…そんな趣味が…」
「なーに勘違いしてんの?
これは貰い物だよ」
「ラブレター?」
「ははっ。
まぁ、そんなトコだよ」
佐倉くんは爽やかに笑い、数歩先の教室に入って行った。
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