I pray 信じて……
大量点を許しながらも、味方の大量援護で、なんとかマウンドで耐え続けていたシゲルの右肩が、この9回に来て、とうとう悲鳴を上げてしまった。

すでにツーアウトまでは取ったが、続くバッターにセンター前ヒット、そのあとのバッターを歩かせたところで、シゲルがタイムを要求した。

マウンドに内野守備陣
キャッチャーのサトシ、ファーストのハルカ、セカンドのシンジ、ショートのシュウ、サードのノゾミ、そしてベンチからナナコ監督代行が集まった。

「いつつつ、そろそろ限界かな…俺の肩…」

「無理もないぜ……」とサトシがいたわるように言う。
「もう150球くらい投げてんだから」

「しゃーない、シゲルはん。ようやったで」

「ナナコ。どうするんだ?」

ノゾミが聞くと、

「交代や。ピッチャー交代」

「誰にするの?」

ハルカが問う。

「シンジ……はん」とナナコは小声で言ったが、それはすぐに自分で打ち消した。

「は、無理やな。受けられるキャッチャーがおらへん」

マウンド上に沈黙が落ちる。確かにシンジの豪腕ならバケモノじみた速球をほうられるだろう。だがそれは受け止めるキャッチャーがいて初めて成立する話なのだ。が、

「心配する必要はない」とシンジは沈黙をかき消した。

「シンジはん?」

「サトシは目をつむってミットを少しでも動かすな。俺を信じろ」

サトシは少し躊躇ったが、「分かった」と頷いた。




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