ラブ・ワールド
いつもは強気のヒロコも、あの時ばかりはショックをうけたらしく


ほとんど 二人きりでは会話の弾まない レイに電話がかかってきたなと…


レイの記憶に新しい。


「で、戻るの?」


「悩んでる…」


「悩んでるってことは、戻りたいから悩むんだろうしなぁ」


リュウはタバコに火を点した。


「だから、相談じゃねーかよ〜」


レイは 明るくふざけて振る舞うリュウに


「ヒロコちゃん、変わらないよ。また同じ事繰り返しだな…」


リュウと知り合い、6年。

すぐにヒロコも紹介された。


6年で、ヒロコは 何も変わっていなかった。


喧嘩したって すぐに仲直り出来る喧嘩ならいい。

レイとナナも全く喧嘩がないわけじゃない。


何が 違うかって。


ナナは決して 口にしないような ナイーブな話しをヒロコは簡単にする。


「リュウは好きだけど、普通に結婚もしたいし、子供も欲しい」


何回、この事で
リュウから相談されたか。


リュウじゃなくても、嫌になる。


出来ることは 全て叶えてあげたいと 思うけど。


どう頑張っても、無理なこともある。


そんなことは、リュウやレイは痛いほど味わっているし


一番 言われたくないこと。


強い人間なんかいない。

まして、ここの小さなコミュニティーの中にアイデンティティを持つ レイたちのような人種は、


弱い。


だから、群れる。


一人になりたくない日も、ある。


そんな人間の集まりなんだから……。


レイは リュウを見ていると つい 「自分なら」と、考えてしまう。


ナナに、


そんな理由で、自分の側を離れられたら…


きっと 気が狂ってしまうかもしれない。


「リュウくんは、ヒロコちゃんのこと好きなのわかるんだけどね…」


ナナが口を開いた。


「私たちは、こうやって話し聞いたり、応援したりしかできないからね…」


ナナの言葉に、リュウは俯いていた。
< 17 / 23 >

この作品をシェア

pagetop