スリー・イヤーズ・カタルシス
【必要な嘘と睡眠薬】
どれくらいの時間が経ったのか
わからなかったけど。
気が付くと
暗いビルのすき間にも
朝の光の気配が差し込んでいた。
おれも彼女も
そのまま
眠りに落ちてしまっていたらしい。
おれが目を覚ますと同時に
彼女も頭を上げるのがわかった。
こんな夜を
こんなところで明かすことになろうとは
思ってもみなかった。
しかも
おれはまだ
顔もはっきりとは見ていなかったし
名前もまだ知らなかったが
それは彼女にしても同じことだ。
「朝だね」
「うん」
当たり前のことの確認から
会話を始めるしか
名前も知らない同士のおれたちには
思いつかなかった。