蛇苺
「・・・立花くん?」
その子が怪訝な表情で僕の名前を呼び、我に返った。
「あ・・ッごめん!今日申し訳ないけど、教科書見せてもらってもい?えっと・・・ごめん、名前・・・」
「橘 市子。」
「あ、おんなじ名字?」
「字は違うけどね。」
いやぁ、顔立ちも大和撫子なら名前も大和撫子。
かっこいいなぁこの子。
化粧・・・してないよな?
おれ男だからよくわかんないけど多分あれ、すっぴんだと思う。髪もいじってないし。
なのに何故か地味な感じがしなく、逆に――・・・。
「橘さんのこと見、す、ぎ。」
「いてっ」
ぽけーっとしているおれの頭を金城がペチンッとはたいた。
頭をさする僕を金城はケラケラと笑ったが、周りを見渡すと先程までの暖かだった空気が若干冷たく感じた。
クラスメート・・主に男子の数名が気のせいか僕を睨み付けている。
――――?
何か睨まれるようなことをしたのだろうか?
いや、覚えがない・・・。
きっと気のせいだろうと、僕はクラスメートたちの鋭い視線に気付かぬふりをした。