蛇苺

「・・・立花くん?」


その子が怪訝な表情で僕の名前を呼び、我に返った。

「あ・・ッごめん!今日申し訳ないけど、教科書見せてもらってもい?えっと・・・ごめん、名前・・・」

「橘 市子。」

「あ、おんなじ名字?」

「字は違うけどね。」


いやぁ、顔立ちも大和撫子なら名前も大和撫子。

かっこいいなぁこの子。


化粧・・・してないよな?
おれ男だからよくわかんないけど多分あれ、すっぴんだと思う。髪もいじってないし。

なのに何故か地味な感じがしなく、逆に――・・・。



「橘さんのこと見、す、ぎ。」

「いてっ」

ぽけーっとしているおれの頭を金城がペチンッとはたいた。


頭をさする僕を金城はケラケラと笑ったが、周りを見渡すと先程までの暖かだった空気が若干冷たく感じた。

クラスメート・・主に男子の数名が気のせいか僕を睨み付けている。



――――?



何か睨まれるようなことをしたのだろうか?

いや、覚えがない・・・。

きっと気のせいだろうと、僕はクラスメートたちの鋭い視線に気付かぬふりをした。
< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop